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多様化するテレビ局と視聴者の接点を次のビジネスへ繋ぐデータ分析基盤の構築

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中京テレビ放送株式会社

中京テレビ放送株式会社は、放送事業、イベント事業、新規事業開発などの事業を行っています。「テレビをより魅力あるものへ」、「新たなサービスの創出」を追求し、地域の信頼と共感を育み、豊かな社会の創造に貢献していきます。

summary

  • ネット時代に配信やソーシャルなどで多様化する放送局のコンテンツと視聴者の接点
  • 複数ソースを集約しリアルタイムで番組視聴データを把握できるデータ分析基盤を構築
  • AWS上での基盤構築の支援を受け、モダンなアプリ開発の知見をチームにインストール

中京テレビは、愛知・岐阜・三重の3県を放送対象地域とするテレビ局です。1969年4月に開局し、日本テレビ系列の番組だけでなく、独自制作のドラマや地元密着型の番組や地域情報番組など、地域に根ざした放送活動を行っています。

インターネットの活用にも積極的で、中部エリアの5つのテレビ局が共同で運営する動画配信サービス「Locipo」に初期から参画したり、YoutubeやInstagramといった外部プラットフォームで情報発信したりしています。

今回、中京テレビではサーバーレスオペレーションズの支援のもと、インターネットを介した動画配信のアクセスログといった、様々なデータを集約し分析し、マーケティングに活用するためのデータ分析基盤を構築しました。

このプロジェクトの概要と、なぜサーバーレスオペレーションズに支援を依頼したのか、同局のICT推進グループ部長の北折さんと同じくICT推進グループの山本さんと、サーバーレスオペレーションズ側で支援を担当した金に開発の背景をうかがいました。

ーー今回、中京テレビでは、独自にデータ分析基盤を構築しましたが、その背景にはどのようなニーズがあったのでしょうか?

北折 皆さんご存じのように、これまでテレビ局では放送した番組の指標として、視聴率を使っていました。しかし、近年では中部エリアのテレビ局が共同で運営する「Locipo」や、多くの民間放送が利用する「TVer」といったインターネット上でのテレビ番組配信サービスが登場し、YoutubeやX(旧Twitter)、Instagramといったソーシャルメディアの利用も増えてきました。

ひとつのコンテンツが、テレビ放送以外にも、様々なプラットフォームを介して視聴者が見ている状況です。ところが、そのコンテンツの視聴データは、プラットフォームごとにバラバラなため、横串を通してみることができませんでした。


ーーこれまでは、どんな形でデータ分析を行っていたのですか。

中京テレビの北折さんと山本さん
中京テレビの北折さんと山本さん

北折 私は以前、編成部門で配信を担当していたのですが、その当時は、それぞれのプラットフォームのダッシュボードからデータをダウンロードして、Excelを使って手動でデータ分析を行っていました。データをダウンロードして、整形して、Excelに流し込んで、集計するという作業をすべて手作業で行っていたので、手間も時間も掛かり、月次で運用するのが精一杯でした。

もちろん、現在でもテレビ放送がもっとも視聴者が多いのですが、それ以外のサービスを通して見ている視聴者が増えてきています。今後は、そうした視聴データを、もっと活用していく必要がありますが、これまではそのための準備ができてませんでした。

いわゆるBIツールもいくつか試してみたのですが、分析のところだけでなく、複数のソースからデータを集めてこなければいけないので、そこを自動化できないと効率化できません。そうするには、自分ひとりだけで実現できることではありません。そこで、最終的には局を挙げてのデータ活用のためのインフラ整備という形で、ほぼすべての部署の人間が関わる大きなプロジェクトになりました。

番組の視聴に関するデータだけでなく、ソーシャルメディアやウェブサイトのアクセス、営業の売上など、業務に関連する多様なデータを取り込んで、会社の基盤をクラウドベースのデータドリブンな形に変えていくことが最終的な目標のひとつです。

山本 テレビ放送の視聴率は、昔から利用されているので、社内外のインフラが整っているんですね。それに比べるとインターネットの配信は、本来リアルタイムでデータ自体は蓄積されているんですが、それを活用できていませんでした。複数のプラットフォームにまたがっているし、それぞれからデータをダウンロードして、クレンジングして、見られるようにするのに時間が掛かってしまいます。

そうすると、現場の感覚としても「1カ月前の数字をみても仕方がない」となってしまいます。でも、視聴率と同じように日次でデータが見られるようになれば、番組制作にも活かす事ができるし、社内でのデータに対する反応も変わって来るはずです。

今回構築したデータ分析基盤におけるダッシュボードのイメージ
今回構築したデータ分析基盤におけるダッシュボードのイメージ

ーー具体的にどのようなデータ分析基盤を構築したのですか?

北折 今回はすべてをAWS上で構築しました。配信サービス等は様々なファイル形式のデータなので、それをLambdaでETL処理を行い、S3とRedShiftによるデータレイクに蓄積し、Glueでなどで分析してデータウェアハウス(RedShift)に格納して、QuickSight上に構築したダッシュボードで、社員なら誰でも分析結果を見られるようにしています。これまでBigQueryで管理していたデータや、オンプレミスの社内データベースなども連動しています。

今回、すべてクラウド上で内製による構築を目指しましたが、これまでチームを組んでクラウドで開発した経験がほとんどありませんでした。GitHubでソースコードを管理して、継続的に開発・運用をしていく、いわゆるモダンなアプリケーション開発をしたことがなかったんですね。そこで、サーバーレスオペレーションズに、クラウド上での開発の内製化体制を構築するための支援をお願いしました。

山本 2023年の4月にプロジェクトがスタートして、年内にプロトタイプが完成して、皆に画面のイメージを見てもらえるようになりました。現在は、そこからのフィードバックを反映して、現在ブラッシュアップを行っているところです。

利用する社員の側も、いきなり全員がデータを使いこなすのは難しいと思います。したがって、初期の段階では、部署ごとにデータに興味がある人、ITが得意なメンバーに協力してもらいながら、皆に使ってもらえるものにしていきます。

ーー今回、サーバーレスオペレーションズには、どういった経緯で依頼して、具体的にどのような支援を行ったのでしょうか。

北折 このプロジェクトを立案した当初から、データ分析基盤はクラウド、かつサーバーレスで構築したいと考えていました。すでに、クラウドの利用は当たり前ですし、管理の手間が掛からないこともサーバーレスのメリットです。それに、データを取り込むプラットフォームの数やデータ量は今後も増えていくでしょうし、継続的にアプリケーションを改良していくならば、チームでクラウドベースの開発体制を取り入れることが必須です。

そこで、ネット上で検索していたところ、サーバーレスオペレーションズの北海道テレビでの事例を見つけたんです。クラウドベースの内製化の支援という同じようなことをやっていたし、以前にAWSのイベントで名前を見かけたこともあったので、ご協力をお願いできないかとお声がけをしました。

山本 実際に開発がスタートしたら、基本的には週次の定期会議でコミュニケーションしつつ、Slack上で随時Q&Aに対応いただきました。先ほど北折が言ったように、GitHubなどを使ったモダンなアプリケーション開発の進め方や、AWS上でのコーディングについてサンプルをいただくというやり方で進めていきました。

特に、40種類くらいある構造化されていないファイルをクレンジングして、データベースに格納する処理のところが、開発作業のなかで重くなると予想していました。そういった知見がなかったので、適切な道標となるサンプルコードやアドバイスをいただけたのが本当に助かりました。そうやって、いろんなケースについて一通りやってきた結果、なんとなく「こうやればできる」という感覚がわかるようになってきました。

サーバーレスオペレーションズの堀家
サーバーレスオペレーションズの堀家

金 今回の支援は、クラウドベースのモダンなアプリケーション開発の基本となるところと、実際に開発が必要な処理の部分に関連するベストプラクティスをお伝えするというのが基本的な内容でした。

そのなかで、心がけていたのは、お客様が悩まれていることに対して、まずプロとして明確な答えを示すというところと、すぐに手を動かして試すことができるようにサンプルコードも含めて全体の手順をお伝えするようにしました。そうすることで、やるべきことの道筋を、できるだけ早く把握していただけるので。

データ分析基盤のサンプル画面。プラットフォームを横断したデータ分析が可能になった
データ分析基盤のサンプル画面。プラットフォームを横断したデータ分析が可能になった

ーークラウドベースの開発スタイルを実践してみて、予想外だったことはありますか?

北折 基本的には想定した通りなんですが、一方でクラウドは万能ではなく、目的に沿った適切なサービス選びと、それに合わせたベストプラクティスを採用しないと、パフォーマンスが出なかったり、コストが想定以上になったりすることを実感しました。

山本 容量が無制限だからといって、すべてのデータをクラウド上に置いても非効率でコストも掛かってしまいます。だから、クラウドであっても、データモデリングの設計といった、基本的なことをきちんとやらないといけないということを改めて認識しました。

データベースはそれぞれ得意不得意があるので、それを組み合わせて使うことがベストなんだと思います。ただ、今回に関しては初めてのクラウドベースでの開発だったので、プラットフォームをAWSひとつに絞ることで、学習コストが下がったことがメリットのひとつだと思います。

中京テレビの北折さんと山本さん、後ろ姿はサーバーレスオペレーションズの金と堀家
中京テレビの北折さんと山本さん、後ろ姿はサーバーレスオペレーションズの金と堀家

北折 データを格納するのにもRedShiftだけでなく、SnowFlakeやBigQueryもありますが、それを選択するにしても、自分達がどういったデータをどのくらい持っていて、それがどんなペースで増えていくのかを知らないと、判断できません。その点で、今回はAWSに必要な機能があったので、ひとつにまとめて、1回使ってみてから、その後に考え直すことができます。

金 要件やアーキテクチャを考えると、すべてAWSで構築することが、決して最適なソリューションではなかったかもしれません。ただし、サーバーレスで行きたいという方針のもとで、モダンなアプリケーション開発を一通り体験されたので、今後は必要に応じてサービスを選び直すといった改良を自分達で進めていけるようになったと思います。

ーー今回のプロジェクトは局を挙げての長期的なものなので、今後も継続的に開発や改善が必要。そのための基礎を固めるための取り組みでもあるんですね。

北折 そういった、こちら側の事情を理解したうえで、サーバーレスオペレーションズは寄り添ってくれて、色々考えてくれました。困ったことがあったら壁打ち相手として、ざっくばらんに聞くと、本当に丁寧に答えが返ってくる。複数のやり方を示した上で、それぞれのメリットとデメリットを示して、今回はこちらが良いというように教えてくれる。まるで、とても性能の良いAIチャットボットのようでした。AWSのような大規模で複雑なサービスを使う上で、すごく助かりました。

山本 クラウドに限らず、開発にはこれが絶対正しい方法があるわけではなく、いろんな選択肢があります。自分達だけだと、決め手に欠けて判断に迷ってしまうところ、サーバーレスオペレーションズは、すばやく具体的な基準になるポイントを示して判断してくれたので、作業が途中で止まるということがありませんでした。その上で、実際のコーディングでは、適切なサンプルコードを示していただいて、いろんな意味で開発を加速することができました。

金 支援する側として心がけていることがひとつあります。質問に対する回答が、実は1つではなく、いろんな回答の方向性があり、技術的にどれが正しいか言い切れない場面があります。そうしたケースでは、いろんな付帯環境や周辺環境に応じて、正解が変わります。だから、お客様が納得が出る答えこそが正解だと我々は考えていて、仮にそれが技術的に正しくないとしても、技術以外の観点も考慮にいれた上で、お客様にとっての正解を見つけていく。その過程を大事にしてます。 

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