テーマは「クラウドとAI」台湾のAWSユーザーと英語で交流
AWS Community Dayは、世界各地のAWSユーザーの有志が集まって開催するコミュニティイベントです。日本でAWSのコミュニティといえばJAWS-UG がありますが、同じようなユーザー主体のAWSコミュニティとイベントが世界各地で開催されています。その中でも、金は以前シンガポールとソウルで開催されたイベントに登壇した経験があり、今回紹介させていただく台湾でのイベントは日本から金と北海道テレビ放送株式会社(参加時)の三浦さん、JAWS-UGの榎本さん、吉江さんの4名が参加しました。
今回のイベントのメインテーマはAIでした。金は三浦さんと一緒に、生成AIを使用したビデオコンテンツの再利用事例を紹介しました。他にも、AWSの生成AIプラットフォーム「Amazon Bedrock」を利用してAIソリューションを作成した事例など、さまざまなAIをテーマにしたセッションがありました。
今回の台湾のイベントに参加して感じたのは、英語の発表に対して皆さん英語で積極的に質問してくれて、とてもやりやすかったことです。台湾でのイベントのスタッフおよび参加者の方々は英語が上手で、日本語を話せる方もいらっしゃいました。規模は小さなイベントでしたが、とても密度が高い交流ができました。
テレビ番組の動画からブログ記事を生成するシステムを発表
HTBでは以前から人気番組のネット配信サービスや番組連動のECサイトなどさまざまなサービスをサーバーレス開発で実装しており、Serverless Operationsでご支援させていただいています。今回の発表で紹介したのは、導入事例でもご紹介したことがあるHTBのオウンドメディア「SODANE」の記事制作を生成AIで支援するシステムをAmazon Bedrockを使ってサーバーレス開発した事例です。セッションでのプレゼン資料を元に、改めて概要を紹介します。
SODANEに掲載されている記事はHTBで放送した情報番組の中のコーナーやニュースで放送した特集を元に作成しています。年間1000本ぐらい掲載しているのですが、テレビ番組の動画を見て、放送中のコメントなどを書き起こし、記事に入れるスクリーンショットを撮影して、文章をまとめるという作業は結構大変です。担当者の異動をきっかけに、人が変わっても記事の本数と品質を維持するために、生成AIで楽にしよう、というのが今回発表したシステムです。
工夫したのは動画のスクリーンショットの扱いです。番組音声の文字起こしを元に番組を紹介する記事を生成AIで作るのは比較的容易ですが、文章にあったスクリーンショットを選んではめ込むのは難しいです。そこで発想を逆転させて、一定の秒数ごとに撮ったスクリーンショットに生成AIでキャプションをつけて、生成AIが記事本文にあったスクリーンショットをキャプションに基づいて選ぶ、というフローにしました。
Amazon Bedrockは用途に合わせてAmazon、AI21 Labs、Anthropic、Meta、Stability AIなど複数の企業が提供する生成AIのモデルを選ぶことができます。HTBのシステムでは、スクリーンショットのキャプション生成には処理が軽いAnthropicのClaude 3.5 Haiku、見出しや記事本文の生成にはClaude 3 Opusと使い分けることで、スクリーンショットの高速な処理と記事の品質を両立させました。
Claude 3は日本語の文章作成がこなれていると定評がありますが、実際、HTBさんからはモデルをClaude 3に変えたことで生成される記事に違和感が目に見えて減ったとコメントをいただいています。モデルを入れ替える前提で考えられるというのはAmazon Bedrockを採用する大きなメリットだと思います。
このシステムで、1つの番組について生成AIが7〜8本の記事の下書きを自動で作成し、人間がレビューして公開する、というワークフローが実現できました。記事作成にかかる時間は平均しておよそ5割程度削減できています。
AWSでユーザーコミュニティが活発なわけ
AWS Community Day Taiwan 2024は、冒頭でもお伝えしたとおり、台湾のAWSユーザーコミュニティによって開催されるイベントです。こうしたイベントは、台湾だけでなく日本を含め世界各国でも開かれており、それは世界中にAWSのユーザーコミュニティが広がっている証でもあります。
次々と発表されるAWSの新たなサービスにキャッチアップする良い方法の一つは、同じ技術を見ている仲間と情報を共有することです。「新しいものにワクワクする」というエンジニア魂が、同じ夢を見ている仲間との連帯感や熱気を生み出したとも言えるのではないでしょうか。
技術コミュニティの中でもAWSが特別だと思うのは、カバーする技術の範囲がとても広いということです。AWS自体が、ネットワークもアプリケーションもフロントエンドも、多くの領域をカバーしています。これまで、こうしたエンジニアのコミュニティ活動は、その領域ごとに分かれていることも多かったと思いますが、AWSのコミュニティは多様な技術領域のメンバーが、同時に参加することができるのです。
また今回参加した台湾のイベントでは、20代-30代の若い参加者が多く、ITエンジニアという職業とAWSが人気であることが伝わってきました。
AWS Community Builderプログラムに参加してみよう
AWSも、ユーザーコミュニティを積極的に後押ししており、AWS Community Buildersというプログラムを設けています。
ユーザーコミュニティ活動を積極的に参加するだけでなく、コミュニティそのものをリードしている人を「コミュニティビルダー」として認定し、コミュニティ企画の支援やグローバルなAWSユーザーネットワークに参加することができます。
現在、全世界で約2,000名を超える人数のコミュニティビルダーが活動しています。誰でも応募できますが、活動実態についてAWSの審査があり、資格は1年ごとに更新されます。言葉が違っても文化が違っても、みんなAWSが大好きで、AWSで開発をしているエンジニアですので、ぜひ応募してみてはいかがでしょうか。