参考記事
建設会社のDX実現と内製化体制構築に向けて、クラウドネイティブなIT人材の育成を支援 | 導入事例 | Serverless Operations
リスキルにより社内から登用したIT人材がAI議事録ツールを内製、戸田建設が取り組むDXを人材育成から支援 | 導入事例 | Serverless Operations
そうした内製化の取り組みのなかで、もっとも大きな成果のひとつが、業務効率化ツール「ToLabel」です。建設や土木の現場で必要な業務を、適切な担当者に振り分け、完了まで適切にフォローする仕組みです。2年前に開発してから、継続的な運用と開発が続けられており、現在では戸田建設の業務に欠くことのできないものとなっているそうです。
「ToLabel」のような業務ツールの開発が、どのようにスタートし、さらに社内で利用してもらうためにどのような活動を行ったのかを、DX推進室の佐藤室長と、実際に開発を担当された宮路様、平林様、石毛様、栗本様、杉浦様に伺いました。
なお、「ToLabel」の詳しい機能については、戸田建設様の「ToLabel」紹介ページをご覧ください。
――戸田建設の皆さまには、これまでにも内製の体制構築やAI議事録ツール「Make Minutes」の開発について伺ったことがありますが、「ToLabel」の開発はどのようにスタートしたのですか?
佐藤 DX推進室メンバーは、さまざまな部署から集まってきたいわば寄せ集め軍団です。だから、元部署でどんな課題があるのか知っていて、その課題と一緒にDX推進室にやってきました。それと合わせて、DX推進室の発足直後に、AWSが実施している事業会社の内製化を支援するプログラム「Angel Dojo」や、「デジタルイノベーションプログラム(DIP)」にも参加しました。そこで、クラウド上での開発について実践的に学びながら、開発に取り組んだのですが、その中からToLabelの原型となるアイデアが生まれました。
杉浦「ToLabel」は、土木の部署から上がってきたビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)に関する要望が発端でした。工事現場では、かなり多くの書類や事務手続きが必要なんですが、そのタスクを現場責任者から担当者に依頼するフローがうまく機能していなかったんですね。メールでやり取りすると煩雑だし、履歴が残らないとか、そもそも誰に何を依頼すればいいのかがわからないとか、煩雑な仕事なのに業務の手順や担当者が整理されていませんでした。結果としてBPOが進まず、現場責任者にしわ寄せがいき、残業が増えてしまうというケースが多かったんです。それを解決するためにはどうしたらいいのかが、ToLabel開発の出発点になりました。
宮路 DIPのプログラムでの学びを通じて、ある程度開発ニーズを見定め、2022年4月にToLabelの開発が動き出しました。最初は私を含め4人の体制で、まずはFigmaでモックアップを作ったのですが、当時はFigmaも知らないような素人だったので、開発当初はサーバーレスオペレーションズさんにおんぶに抱っこでした。
――土木工事の現場における事務関係のプロセスのボトルネックを解消するために、専用のWebサービスを開発されたんですね。こうした業務ツールは開発するの同じくらい、使ってもらうための苦労があると思いますが、実際にはどうでしたか?
宮路 2022年10月に最初のバージョンをリリースしましたが、最初は少数のモデル現場を定めて、実証という形で使ってもらいました。現場にいきなり「このシステムを使って」と渡すだけでは、多忙な現場のスタッフにはなかなか触ってもらえません。そこで我々メンバーが各現場に足を運んで説明会を行い、使い方やメリットを丁寧に伝えました。そうやって全国にある支店ごとに、半年ほどかけて説明会を行って広めて行きました。近いところは実際に足を運んで、遠隔地はリモートで説明会を開きました。ToLabel上でのBPOの依頼は、リリース当初は月に数件程度でしたが、現在では数百件の依頼が処理されるようになっています。
――業務アプリは現場での使い勝手が重要だと思いますが、リリース時の要件定義や、リリース後の現場からの要望への対応はどのように行ったのでしょうか。
平林 開発当初に、これが必要、あれもあった方がいいっていう、「理想のToLabel」についてみんなで議論しました。そうやって出てきた要件を最初の段階ではすべて否定せず、必要と思われる順番で追加していったんです。今はどんどんユーザーが増えてフィードバックもいただける状態になったので、今度はそうしたフィードバックに基づいた機能を、可能な限り実装しています。その結果、「ToLabel」の機能がどんどん充実しています。
栗本 アップデートの繰り返しで、機能やUIはリリース当初からかなり変わっています。利用者からの要望については、アンケートを取っていて、現在でも隔週に1回のペースでアップデートしています。「こういう機能が欲しい」という要望のうち、どれを実装するかは、今でも毎週打ち合わせを行って決めています。
宮路 機能も利用者も増えて、データがどんどん貯まって行った結果、データが壊れたり、操作画面のレスポンスが非常に悪くなったりしたことがありました。「仕事にならない」と現場から声が上がってくるなかで、サーバーレスオペレーションズさんに相談しながら、なんとか復旧したこともありました。
――「ToLabel」は戸田建設様の事業に直結するシステムということで、開発と運用にかかる責任は大きいと思いますが、今後も内製を継続される予定ですか?
佐藤 その予定です。DX推進室では他にも多くのプロジェクトがありますが、自分たちだけで全てコードを書いている中では、「ToLabel」が1番規模の大きいものになっています。
もちろん、すべての開発を自分達でやれるわけではありません。でも、自分達でできることは、自分達でやることによって、どんどんとできることが大きくなっていきます。そうすることで、自分達ではできないことをベンダーに依頼する際、その計画や見積もりが適切かどうか判断できるようになります。
現在も、いくつかベンダーに開発を依頼しているプロジェクトがありますが、その開発にはDX推進室のメンバーもエンジニアとして参加しています。
杉浦 満足度調査もやっているのですが、社員からは5段階評価で4以上をずっともらっていて、少しずつ伸びて来ています。具体的な数字目標は決めてないんですけど、下がらないように良くしていこうねっていう認識で、チームみんなが動いています。
栗本 「ToLabel」の開発でソフトウェア開発に対しての自信と、AWSを活用する技術が身につきました。一番大きいのは、失敗を怖がらなくても良いと学べたことです。この経験は他では得がたいもので、他のプロジェクトで確実に生きています。
石毛 私は開発メンバーのなかでは、最後に参加したのですが、1年前にDX推進室に異動になってすぐに「ToLabel」の開発に参加したいと手を挙げました。自分達でこれをイチから作ったと聞いて、すごいと感じて、「ToLabel」の開発に参加することが一番の勉強になると思ったからなんです。実際に開発するのは大変でしたが、ToLabelに参加したことで素早くいろんなことを学べたと思います。
平林 「ToLabel」は、内製したもので1番規模が大きなものですが、すでに3年前にスタートしたものです。そろそろ第2、第3の「ToLabel」をDX推進室から生み出したいと思っています。そうした大規模な開発では、まだまだ経験が足らないので、その際はサーバーレスオペレーションズさんを頼りたいと思います。